人間関係

友人の訃報が、2か月後に届いた。「また今度」を約束したままだった

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小さな映画館の入口で、1人分のチケットを手に上映を待つ55歳の征一のイメージ

最後の返事は、「了解。また今度な」。その言葉を読み返したとき、友人はすでに亡くなっていました。遅れて届いた知らせに、55歳の征一が返せなかった言葉のSTORYです。

※この記事のSTORY部分は、実際に起こり得る状況をもとに構成したオリジナルフィクションです。人物・出来事は架空です。

STORY|知らせてほしかった、と書きかけた

封筒の差出人は、亮介の妻だった。

55歳の征一は、郵便物を立ったまま開けた。夫は8月に亡くなりました。葬儀は近親者のみで済ませました。生前のご厚誼に感謝いたします。日付を見直す。もう10月だった。

便箋の最後には、香典、供花、弔問は辞退する旨が添えてあった。

亮介も55歳だった。専門学校で隣の席になり、就職先が別々になってからも、年に何度か映画を見ては感想を言い合った。亮介は必ず、征一が褒めた場面に文句をつけた。

「そこがいいんだろ」「だから、お前は予告編にだまされるんだよ」

最後に会ったのは、昨年の暮れだ。春に征一の担当が変わり、土曜日も仕事になることが増えた。初夏、亮介から映画の予告動画が送られてきた。

征一が「今ちょっと忙しい。落ち着いたら行こう」と返すと、「了解。また今度な」と届いた。その後は連絡していなかった。

病気だったことも、知らなかった。

スマホの連絡先から亮介の名前を開き、征一は電話の印へ指を伸ばした。押す前に、手を下ろした。

最後の時間を、何も知らなかった

その晩、妻に封筒を見せた。

「会う約束、してたんだ」

それだけ言うと、妻は便箋を封筒へ戻して、征一の前に置いた。「そうだったの」と言ったきり、続きを尋ねなかった。

征一は亮介の妻への手紙を書き始めた。お知らせいただき、ありがとうございました。その次に、「どうして、もっと早く」と書き、紙を裏返した。

自分だって、何か月も連絡しなかった。

会えなかったことと、知らされなかったことが、胸の中で混ざっていた。親しかったはずなのに、最後の時間について何も知らない。それが寂しくて、腹立たしくもあった。

亮介の妻とは、昔、何度か顔を合わせて挨拶した程度だ。どんな看病をしたのか。誰に何を伝えたのか。今の自分には、聞けば答えてもらえるような気がしていた。

白い紙をもう1枚出した。

病気や最期の様子を尋ねる代わりに、専門学校の帰り、2人で見た映画のことを書いた。感動作のはずなのに、亮介が主人公の仕事の雑さばかり気にしていたこと。映画の後に入った店でも、まだ文句を言っていたこと。

「ご返信にはどうぞお気遣いなさらないでください」と添えた。会いに行きたいとは、書かなかった。

翌朝、投函した。出したからといって、気持ちが落ち着いたわけではなかった。

席は、1つでよかった

翌週の土曜日、征一は、亮介とよく通った小さな映画館へ行った。初夏に送られてきた映画は、もう上映していない。入口の上映案内から、名前を聞いたことのない作品を選んだ。

「お1人様ですね」

窓口で聞かれて、「はい」と答えた。

昔は通路側をどちらが取るかで、よく揉めた。亮介は上映中に出ないくせに、すぐ出られる席を欲しがった。征一はその隣を選んでいた。

今日は通路側を買った。隣の席を余分に取ろうとは思わなかった。そこまでして亮介を連れてきたことにするのは、何か違った。

上映を待つ間、入口の脇で小さなチケットを裏返した。来る途中から何度も、亮介が最後に送った「また今度な」を見ていた。

あのとき無理にでも予定を決めていたら、会えたのだろうか。もう外出が難しかったのかもしれない。どちらも、征一には分からなかった。

映画は、予想した結末にはならなかった。主人公が黙って歩き去るところで、亮介なら「それで終わりかよ」と言いそうだった。

外に出ると、日が傾いていた。征一は感想を送る画面を開いて、閉じた。

映画は悪くなかった。それを、あいつに言いたかった。

この話、実際なら?|友人の訃報を後から知ったとき

知らせが遅れて届くと、お悔やみをどう伝えるかだけでなく、「なぜ知らなかったのか」という気持ちにも戸惑います。ここでは、遺族への連絡と、自分の悲しみへの対処を分けて考えます。

1.訪問や贈り物の前に、遺族の意向を確認する

訃報に弔問・香典・供花などを辞退する記載がある場合は、その意向を尊重します。香典を辞退しているから花ならよい、と一律に判断せず、案内に書かれた範囲を確かめましょう。NTT西日本の香典辞退に関する案内でも、辞退の内容に応じた対応が紹介されています。

弔問を希望する場合も、突然訪ねず、受け入れが可能か先に確認します。辞退されているときは、訪問を重ねてお願いするより、手紙など別の方法で気持ちを伝える選択があります。

2.お悔やみと、知りたいことを分ける

短い手紙なら、訃報に接したお悔やみ、故人との思い出、遺族を気遣う言葉などでまとめられます。編集部からの提案として、死因や連絡が遅れた理由への質問を、最初のお悔やみに詰め込まないことを勧めます。返信を急がせず、訃報や家族の事情をSNSなどへ無断で広めない配慮も大切です。

3.悲しさが生活に響くときは、相談先を探す

すぐに気持ちを整理できなくても、無理に前向きな結論を出す必要はありません。眠れない、食べられないなどのつらさが続く場合は、かかりつけ医などへ相談することも考えられます。

死別後の支援には、例えば、がんで大切な人を亡くした遺族を対象とする国立がん研究センター中央病院の遺族ケア外来があります。これは対象や利用条件のある個別の医療機関の例です。友人との死別で利用できるかを含め、相談先ごとに対象・予約・費用を確認してください。

次の一歩|伝える言葉を、短く書いてみる

すぐに送らなくても構いません。お悔やみとして伝えたいことと、自分が知りたいことを、いったん別々に書いてみましょう。遺族への連絡では、相手の意向と負担を確かめます。

故人との写真や記録を残すことについては、「父のスマホが開かない。写真を1枚、取り出したかっただけなのに」でも、残された人それぞれの思いを描いています。

※実用情報は2026年10月25日に上記資料を確認。弔意の伝え方は宗教・地域・家庭の意向によって異なります。相談機関の対象・利用条件は各窓口へご確認ください。