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退職した年も、ふるさと納税は去年と同じ?選んだ返礼品を、申し込まなかった理由

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自宅の庭で肉とピーマンを焼き、帰省した息子と笑い合う59歳の啓悟のイメージ

退職した年のふるさと納税も、去年と同じ金額でいいのだろうか。59歳の啓悟は、給与が減った分を退職金で補って考えていました。息子が帰省する日に食べる肉を選び、寄附を申し込もうとしたところで、入力した「年収」が気になります。

※この記事のSTORY部分はオリジナルフィクションです。人物・出来事は架空です。

STORY|退職金も、今年入ったお金だから

3万円の寄附で届く牛肉を、啓悟は画面の中で拡大した。

妻と2人で暮らす家に、来月、独立した息子が帰ってくる。小さな庭で焼肉をすることになっていた。去年の返礼品の肉が好評だったから、今年も同じものを、と考えた。

6月、59歳で早期退職した。年内にもう一度働くかどうかは決めていない。給与が入ったのは半年分ほどだが、退職金はまとまって振り込まれている。

ふるさと納税の簡易シミュレーターで、給与収入の欄に、その2つを足した金額を入れた。表示された目安は、去年より大きかった。

退職金も、今年自分が受け取ったお金だ。啓悟には、それほど変な計算に思えなかった。

今年はすでに、米の返礼品がある自治体へ2万円を寄附している。肉の3万円を足しても、画面の目安には届かない。

申込みへ進む前に、去年の寄附額も見ておこうと履歴を開いた。去年は給与だけで計算していた。

給与収入。退職金。

会社から届いた書類も、別々だったはずだ。

啓悟は画面を閉じずに席を立ち、書類を取りに行った。

同じ年収の欄に、入れてよかったのか

給与の源泉徴収票と、退職所得の源泉徴収票を並べた。退職金の紙には、給与の紙とは違う項目があった。

検索すると、「退職金は対象外」と書かれた説明も、「退職所得も含む」とする説明も出てきた。どちらを信じればよいのか分からない。

税の相談窓口へ電話し、退職金を給与収入の欄に足して試算したと伝えた。手元の書類に沿って所得の種類を分け、市の住民税担当にも確認することになった。

退職金にかかる所得税の話と、住民税の話は同じではない。簡易計算の給与欄へ合計額を入れても、自分の控除上限を確かめたことにはならなかった。

もう一度、給与の書類を見た。去年より少ないことは、計算しなくても分かった。退職金の入金を見た安心感のまま、給与が減った年だということを脇へ置いていた。

窓口へ確認するため、年内に支払う社会保険料の見込みも調べた。退職後に届いた保険料の通知を、封筒から出した。

今年の収入と控除を整理すると、少なくとも、最初の画面の数字を当てにして肉を申し込める状態ではなかった。

啓悟は、その申込みをやめた。すでに寄附した2万円分については、書類をそろえて控除と申告方法を確かめる。まだしていない寄附まで、先に増やすことはしなかった。

肉が来ないことと、息子が来ること

息子に連絡したのは、その夜だった。

「肉、去年と同じのは頼まないことにした」

「じゃあ、何か買っていこうか」

「いや、こっちで用意する。ふるさと納税の計算、間違えてたんだ」

言ってから、少し恥ずかしくなった。退職して、時間も金も前より上手に使えるつもりでいた。

息子は「分かった」と答え、何時の電車にするかを話し始めた。肉の銘柄については、何も聞かなかった。

啓悟は家族用の予定表に、到着時刻を書き込んだ。ふるさと納税の上限を確かめることと、息子を迎える支度は、別に進められた。

前日、近所の肉店で、用意していた夕食代の範囲で買える量を選んだ。去年ほど多くはない。畑をしている隣人から分けてもらったピーマンも焼くことにした。

当日、息子は小さな保冷袋を持ってきた。

「肉じゃないよ」

出てきたのは、プリンが3個だった。息子と啓悟と、台所で皿を用意している妻の分だった。

庭で肉を焼きながら、息子が「このピーマン、うまい」と言った。

「肉の感想も言えよ」

啓悟が言うと、息子は箸を止めて、今度は肉をじっくりかんだ。わざとらしくうなずくので、啓悟も笑った。

食後、冷蔵庫を開けた。中には、息子が持ってきたプリンが3個並んでいた。

この話、実際なら?|退職年のふるさと納税で確認したいこと

1.去年の寄附額や、振込額の合計を目安にしない

自己負担が原則2,000円に収まる寄附額には上限があり、その年の所得や各種控除などによって変わります。年の途中で退職し給与が減った場合、前年と同じ金額でよいとは限りません。給与、年金、その他の所得、社会保険料などの控除を整理し、その年の条件で確認します。

また、寄附額がそのまま返金される制度ではありません。所得税の控除と、翌年度の個人住民税の控除などで反映されます。参照:国税庁「ふるさと納税(寄附金控除)」。

2.退職金を、簡易計算の「給与収入」に足さない

一般的な退職手当は、給与と異なる退職所得として扱われます。給与収入だけを前提とする簡易シミュレーターに退職金を足すと、適切な目安になりません。「退職金が多いから上限も大きい」「退職金はどの計算にも関係しない」と一括りにせず、所得税と住民税の扱いを分けて確認してください。

特に、退職時に分離課税される退職所得に対する住民税は、ふるさと納税の住民税の控除限度額を算定する所得割額には含まれません。退職金のある年は、給与と退職所得の源泉徴収票などを用意し、税務署や市区町村の住民税担当へ自分の条件を確認すると確実です。参照:国税庁「退職金を受け取ったとき(退職所得)」、八王子市「退職所得は、ふるさと納税控除限度額に影響しますか。」(住民税の扱い)。

3.控除上限の目安と、申告の手続を分けて確認する

退職したことだけで、ワンストップ特例が必ず使えなくなるわけではありません。確定申告が不要で、寄附先が5自治体以内であることなど、利用条件を確認します。還付申告や医療費控除などで確定申告をする場合は、ワンストップ特例の申請分も含めて、寄附金控除を申告する必要があります。

すでにした寄附と、これから検討する寄附を一覧にし、受領証明書等を保管しましょう。試算額は目安であり、年内の収入や控除が変われば結果も変わります。返礼品を選ぶ前に、税の扱いと家計から支払える金額の両方を確認してください。

次の一歩|給与と退職金の書類を、分けて出す

今年の給与・退職所得の書類、今後の収入見込み、控除の資料、寄附済みの金額をそろえましょう。不明な所得や控除は空欄のまま判断せず、相談先に確認します。

退職後のお金全体の使い方には、「退職金が入ったのに、新しい靴を買えなかった|運用の前に考えたい使い道」も参考になります。

※制度・資料は2026年10月31日に確認。物語内の寄附額・家計は架空の設定で、個人の控除上限や税額を示すものではありません。