おひとりさま・老後

便潜血の「要精密検査」を、冷蔵庫に貼ったままにしていた

【PR】この記事にはアフィリエイト広告を掲載しています。商品・サービスの案内は記事本文と区別した広告枠に表示しています。

冷蔵庫に貼った検診結果の紙を見ながら、スマートフォンを手に予約をためらう54歳の友章のイメージ

結果の封筒は、開けた。必要なことも読んだ。それなのに、予約だけができない。ひとり暮らしの友章は、大腸がん検診の結果を冷蔵庫に貼り、毎朝その前で弁当を詰めていました。

※この記事のSTORY部分は、実際に起こり得る状況をもとに構成したオリジナルフィクションです。人物・医療機関・勤務先は架空です。

STORY|「忙しい」の中に、怖いが混じっていた

冷蔵庫の扉を開けるたび、紙の端が揺れた。「要精密検査」の文字だけ、マグネットで隠れている。

54歳の友章は、物流会社で配車の仕事をしていた。離婚して6年。朝は弁当を作り、週末には自転車で川沿いを走る。検診を受けたのも、会社の案内をきちんと読んだからだった。

便潜血検査の結果が届いた晩、案内にあった電話番号をスマホへ入れた。だが、発信する前に受付時間が終わった。翌日は月末の調整、その次は同僚の休み。2週間たつと、「まだ電話していない」が「今は忙しい」に変わった。

腹は痛くない。食欲もある。昔、痔になったこともあった。自分に都合のよい説明は、予約を取らなくても次々見つかった。

日曜、妹の実花が借りていた工具を返しに来た。冷蔵庫の紙を見て、振り向いた。

「これ、もう病院に行ったの?」

「来月。今、休めないから」

「来月のいつ?」

「だから、これから決めるんだよ」

妹は黙った。友章は、監督されているようで面白くなかった。1人で生活できているし、検診にだって行った。そこまでやって、叱られる理由が分からなかった。

実花は帰り際、「一緒に来てほしいなら言って」と言った。友章は「そこまでじゃない」と答えた。何がそこまでではないのか、自分でも分からなかった。

その夜、もう一度便を調べて、陰性だったら済むのではないかと思った。検査をし直す方が、まだ気が楽だった。国立がん研究センターの案内を開くと、便潜血検査のやり直しは精密検査の代わりにはならないと書いてあった。症状がないことも、受けなくてよい理由にはならなかった。

画面を閉じた。正しい説明を読めば、怖くなくなると思っていた。逆だった。逃げ道が減った気がした。

翌朝、会社の休暇申請の画面を開いた。前の月にも歯科で休んでいる。続けて休むと思われるのが嫌だった。だが、上司が何か言ったわけではない。友章はまだ、日付も相談していなかった。

昼休み、電話をかけた。受診の流れを聞き、最初の診察を予約した。電話が終わっても、腹の底の重さは変わらなかった。

実花へ「予約した」と送った。すぐに「よかった。何日?」と返ってきた。

日付を打ったあと、「結果はまだ何も分からないから」と付け足した。妹からは「うん。予定を空けられるか見たかっただけ」と来た。友章は返信欄に書いていた「大げさにしないで」を消した。

診察では、結果の紙と、飲んでいる薬を確認された。医師から検査の方法や注意点の説明を受け、日程を決めた。検査前の食事や薬、当日の帰り方について、自分の場合はどうすればよいかを聞いた。休みは当日だけで足りるかも、職場へ返事をする前に確かめた。

帰宅して、冷蔵庫の紙を外した。代わりに検査日のメモを貼ったが、これで片づいたような気分にはなれなかった。

検査の日、受付で名前を告げた。手のひらが湿っていた。隣の椅子には、友章の希望を聞いて付き添った実花が座っている。友章は結果の紙を渡したあとも、鞄の留め具を何度も触った。

「早く終わるといいね」と実花が言った。

友章は首を振った。

「急がなくていい。聞きそびれたら、今日は聞いてから帰る」

名前が呼ばれた。実花が立ち上がりかけると、友章は「ここで待ってて」と言った。留め具を閉じ、今度は紙を持たずに受付へ歩いた。

この話、実際なら?|便潜血陽性は、やり直して終える判定ではない

友章が予約できなかった理由は、予定の問題だけではありませんでした。ただ、不安があるからこそ、結果を自己判断で打ち消さず、受診先へ具体的な疑問を伝えることが大切です。

1.陽性はがんの確定ではないが、精密検査が必要

国立がん研究センター「大腸がん検診について」では、便潜血検査で1日分でも陽性なら、精密検査を受けるよう案内しています。陽性だけでがんと決まったわけではありませんが、症状がない、痔があるという理由で原因を決めることもできません。便潜血検査を再度受け、陰性になっても精密検査の代わりにはなりません。

2.検査の準備と帰宅方法は、予約先の指示で確認する

精密検査では一般に全大腸内視鏡検査などが行われ、必要に応じて組織を調べます。検査には出血や穿孔などのリスクもあり、実施方法は医師が判断します。結果通知を手元に、受診先、事前診察の有無、食事・薬の注意、鎮静の扱い、当日の運転や付き添いの必要性を確認しましょう。薬を自分で中止したり、別の人の準備方法をそのまままねたりしないでください。最近内視鏡検査を受けた人も、その結果を担当医へ伝えて相談します。

3.「何が怖いか」を、短い言葉で伝えてよい

痛み、結果、仕事を休むこと、1人で行くこと。気になる点を書いて受診時に渡す方法があります。これは編集部からの提案です。同席を頼む場合も、本人が質問するのか、説明を一緒に聞いてほしいのかを分けると頼みやすくなります。家族の同席については、「診察室で、父が私の説明を止めた。通院の付き添いで急いでいたこと」でも、本人が話す役割を描いています。

次の一歩|結果通知を手元に、受診の流れを確認する

まだ予約していないなら、結果に記載された案内先や医療機関へ連絡し、最初に必要な受診と準備を確認してください。血便、腹痛、便の状態や回数の変化がある場合は、次の検診を待たず医療機関へ。検診結果とは別に、症状も伝えます。

※実用情報は2026年10月17日に上記の公式資料を確認。この記事は個別の診断や検査方法の指定を行うものではありません。受診・検査の具体的な進め方は医療機関に確認してください。