スマホを返せば、残りの支払いはなくなる。58歳の靖彦は、そのつもりで買い替えに出かけました。けれど、いつも使えていた画面の傷が、返却の条件に関わると分かります。新しい機種を選ぶために取った予約は、今の1台にいくら払うかを考える時間になりました。
※この記事のSTORY部分はオリジナルフィクションです。人物・店舗・契約内容は架空です。
STORY|買う機種は、もう決めていた
靖彦は、店員に見せるため、新しいスマホの色を表示した画面を開いていた。
2年前に買った今の端末は、返却を条件に最後の支払いが不要になるプログラムで契約した。そろそろ、その時期だった。月々の支払いが急に増えるくらいなら、新しいものに替えたい。
カメラの性能も調べた。仕事帰りに寄れる店を予約し、在庫まで確認してあった。
「まず、今お使いの端末を見せていただけますか」
店員に渡す前に、ケースを外した。画面の端から細いひびが延びている。半年前、駅の階段で落としたときのものだった。表示も操作もできたので、そのまま使っていた。
店員は傷を確かめ、契約の画面と照らし合わせた。
「この状態だと、返却の際に追加の費用がかかる可能性があります。条件を確認しますね」
「返せば、残りは払わなくていいんですよね」
「残りの支払いを不要にする特典と、破損している場合の費用は、別の条件なんです」
店員から端末を受け取り、靖彦は新しい機種の色が出たままの画面を消した。
「普通に動いてるんですけど」
言っても、傷がなくなるわけではなかった。店員は、画面割れの判定について書かれた案内を見せた。
返さない、という欄
靖彦は、2年前の説明を全部忘れていたわけではない。返却が必要なことも、期限があることも覚えていた。ただ、使えているスマホなら返せると思っていた。
「2年で替える人は、みんなこれにしているんですか」
店員が答える前に、聞きたいのはそれではないと思った。ほかの人がどうしたかでは、自分の支払額は変わらない。
「今日は買わなくても大丈夫ですか。返した場合と、返さない場合を、先に知りたいです」
店員は、新しい機種の見積書を脇へ置いた。
今の状態で返却した場合の費用。端末を手元に残し、残額の支払いを続ける場合。修理をした場合の見積もりと、加入している補償で対象になる範囲。順に確認してもらった。
この契約では、返さずに使い続けることもできた。ただし、支払いが終わったことにはならない。残額をどう払うか、手続と今後の請求も確かめた。
靖彦は、もらった紙を2枚並べた。
新しいスマホへ替えれば、古い方の追加費用だけでなく、新しい方の支払いも始まる。今のスマホを直して使えば、修理代と、まだ残っている端末代を払う。
どちらにも、お金がかかった。
「返さないと損」と思って来たのに、返す方だけが無料になる計算ではなかった。
新しいカメラで、何を撮るつもりだったか
予約した時間をかなり過ぎていた。靖彦は、今日は買い替えないと伝えた。修理の正式な見積もりを確認し、いったん持ち帰った。
帰宅して、新機種の紹介動画をもう一度見た。遠くの建物が大きく写り、夜景もきれいだった。
今のスマホの写真を開くと、最近撮ったものが並んだ。自分で焼いた卵焼き。駅前の工事の迂回案内。会社で頼まれた備品の型番。
どれも、今のカメラで困ってはいなかった。
それでも、新しいものが欲しい気持ちは残った。動画を閉じたあとも、あの色はいいなと思った。
修理代と残額を払って、今の端末を使う。買い替える場合は、返却時の追加費用がどうなるかを確認したうえで、新しい端末代も払う。靖彦は、これから1年間に払う額を書き出した。通信料は別にして、同じ期間で比べた。
新しいカメラのために、その差額を出したいか。
そこまで考えてから、修理を頼む方を選んだ。返却の特典は今回使わず、残りの支払いを続ける。安く買えたことにするためではなく、もう少しこの1台を使いたかった。
買い替えない、と決めたあとも
修理が終わった端末を受け取ると、画面が少しよそよそしく見えた。中の写真も、アプリの並びも同じだった。
店員に礼を言って立ち上がり、新しい機種の展示台の前で足が止まった。動画で見た色が、店の明かりでは少し違って見える。
「これ、色だけ、もう一回見てもいいですか」
店員が笑って「どうぞ」と答えた。
靖彦は修理したスマホを鞄にしまい、展示機を手に取った。やっぱり、いい色だった。
ただ、今度は落とさないように、もう片方の手も添えた。
この話、実際なら?|スマホ返却プログラムは、残債と端末の状態を一緒に確認
靖彦は、返却以外の選択肢と総額を確かめてから決めました。実際の条件は、通信会社・プログラム名・加入時期・機種・補償の契約で異なります。「2年で返す」という呼び方だけで判断しないことが大切です。
1.返却による支払い免除は、自動とは限らない
契約画面で、プログラム名、残額、申込・回収の期限、査定条件を確認します。例えば、新規受付が終了したauの「スマホトクするプログラム」では、以前に加入した人向けの案内に、所定の回収・査定条件が示されています。画面割れなどでは追加費用が生じたり、特典を利用できなかったりする場合があります。使えていることと、査定条件を満たすことは同じではありません。
2.返さずに使う場合の支払いも聞く
同プログラムの残価の支払方法に関する公式FAQでは、継続利用時の再分割や、一括支払いの方法を案内しています。これは当該プログラムの例です。自分の契約でも同じ方法が使えるか、手続の要否と請求時期を確認してください。
回線の乗り換えと、端末代の支払い・返却は別に確認します。修理を考える場合も、先に加入中の補償、修理窓口、修理後の査定の扱いを聞き、自己判断で修理してから返却しないようにしましょう。
3.月額だけでなく、同じ期間の総額を比べる
「返す場合の追加費用と次の端末代」「使い続ける場合の残額と修理代」を、例えば今後1年間という同じ期間で比べます。期間後に残る支払いも併記すると、月額だけが安く見える比較を避けられます。通信料、補償料、事務手数料なども、変わるものは別に書き出します。安い方だけでなく、必要な機能や使える見込みも判断材料です。
次の一歩|返却を申し込む前に、契約名と残額を出す
購入時の書類や公式の契約画面を開き、契約名・残額・期限をメモしましょう。傷がある場合は、返却を決める前に窓口へ状態を伝え、費用と査定の条件を確認します。返却するなら、データ移行、バックアップ、初期化なども、その契約の公式手順に沿って進めてください。
スマホを長く使うときは、使いやすさも大切です。家族が設定を手伝う場面を描いた「父のスマホを『簡単』にしたら、『前の方がよかった』と言われた」も、あわせてご覧ください。
※公式資料は2026年11月5日に確認。auの案内は2026年9月18日時点、FAQは2026年4月2日更新の内容を参照しています。物語の契約・判断は架空の設定で、特定のプログラムの推奨や、修理・継続利用が常に割安になることを示すものではありません。