お金・資産

「お金は自分で払うのに」マンションの窓を、勝手に替えられなかった

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自宅マンションの居間で、窓の結露を布で拭く56歳の慶太のイメージ

毎朝拭いているのは、自分だ。交換するお金だって、自分で出す。それなのに、なぜ先に管理組合へ聞くのか。窓のリフォームを考え始めた慶太は、そこで足を止められたように感じました。

※この記事のSTORY部分は、実際に起こり得る状況をもとに構成したオリジナルフィクションです。人物・マンション・工事会社は架空です。

STORY|窓の向こう側にも、持ち主がいた

去年の冬、寝室の窓を拭く布は、朝になると絞れるほどになった。

56歳の慶太は、築28年の分譲マンションに住んでいる。引っ越してきたときは気にならなかった窓の冷たさが、在宅で働く日が増えてから気になった。窓際に机を置いていたが、冬は椅子を廊下側へ寄せていた。

今年こそ替えよう。秋の休日にリフォーム会社へ連絡し、寝室と居間の窓枠ごと交換する見積もりを頼もうとした。

担当者から最初に聞かれたのは、窓の大きさではなかった。

「管理規約と、管理組合への申請方法は確認されていますか」

慶太は、「分譲ですよ。賃貸じゃなくて」と答えた。相手は分かっていますと言い、窓枠や窓ガラスは共用部分とされていることが多いので、先に確認したいと説明した。

電話を切っても、納得できなかった。廊下もエレベーターも、皆が使う。だが、この窓を開けるのは自分だけだ。誰も代わりに結露を拭きに来ない。

管理会社へ送った問い合わせには、つい「費用は全額こちらで負担する予定です」と太字で書いた。

返事には、このマンションの規約の該当箇所と、工事の申請に必要な資料の案内が添付されていた。自費だから申請が不要になるわけではなかった。

「それなら、いつ窓を替えてくれるんですか」

次のメールにそう打ち、送信した。

その晩、購入時からしまったままだった規約の冊子を出した。窓枠と窓ガラスは専有部分に含まれない、とあった。窓について自分に認められている使い方と、自由に取り替えることは、同じではなかった。

一緒に出てきた総会の資料には、開口部の改修について調査を検討する記載があった。慶太が出席せず、委任状だけ出した総会だった。具体的な実施時期も、負担額も決まってはいなかった。

読んでいなかったのは自分だ。それでも、寒い部屋で次の冬まで待つのは嫌だった。

数日後、同じ階の藤村とエレベーターで会った。今期の理事をしている人だった。慶太は、窓の話を切り出した。

「色も同じにするつもりなんです。何が問題なのか、よく分からなくて」

藤村は、図面を見ないと自分には判断できないと言った。工事の仕方や外観への影響を確かめ、理事会で検討することになる、と。

慶太は、ここでも待てと言われた気がした。

「皆さん、結露しないんですか」

藤村が一瞬、黙った。

「うちも拭いてます。だから、早く考えたいとは思っています」

エレベーターが止まった。慶太は、その人の家の窓について初めて聞いた。理事会の向こうに、寒くない部屋ばかりが並んでいるわけではなかった。

工事会社との相談をやり直した。外側の窓を交換する案と、既存の窓の内側に内窓を付ける案。何を触る工事なのか、図面と仕様を分けてもらった。内窓でも、このマンションで必要な申請は確認した。

全部の窓を一度に直すつもりで用意した予算は、そのまま残っていた。だが、将来の全体改修との関係が分からないまま、急いで使い切る気にはなれなかった。

慶太は、まず寝室だけに内窓を付ける案を申請した。必要な資料を出し、承認を受けてから工事日を決めた。居間は今回は見送った。

工事後、寝室の窓を開けるには、2つの窓を動かすようになった。窓際の物も置き直した。思っていたほど、何もかもが楽になるわけではない。

次の理事会へ出す要望書には、「早く替えてほしい」とだけ書くのをやめた。困っている窓の場所、冬の様子、全体改修について知りたいことを書いた。自分で内窓を付けた場合、今後の工事とどう調整するのかも尋ねた。

提出の翌朝、居間の窓を拭いた。寝室に置き忘れた布を取りに戻ると、窓際へ戻した椅子が目に入った。

慶太は布を持って居間へ行った。今度の総会の日程は、すでに仕事の予定表に入れてあった。

この話、実際なら?|外窓の交換と、内窓の設置を分けて確認する

自費で暮らしを改善したいという希望と、共同の建物に手を加える手続は、両方を考える必要があります。以下は分譲マンションの区分所有者を想定した整理です。

1.いつも使う窓が、専有部分とは限らない

国土交通省「マンション標準管理規約」の単棟型では、窓枠・窓ガラスを専有部分に含めず、共用部分として扱います。特定の住戸が使う専用使用権があっても、自由に取り替えられるという意味ではありません。

ただし、標準管理規約は各マンションの規約を作成・改正する際のひな型です。全物件にそのまま適用される規約ではないため、自分の建物の管理規約・使用細則・工事のルールを確認してください。

2.「窓は交換禁止」「内窓なら申請不要」と一括りにしない

標準管理規約第22条は、断熱等のための開口部の改良を原則として管理組合の計画修繕とし、速やかに実施できない場合に、所定の申請と承認を経て区分所有者の責任・負担で行う仕組みも示しています。自費なら即着工できるわけでも、個人での改良が一切できないわけでもありません。

内窓は、既存の窓の内側に新たな窓を付ける方法で、外窓交換とは工事範囲が異なります。それでも、取付位置や方法、他の部分への影響により確認が必要です。国土交通省の専有部分内工事のQ&Aも、各マンションのルールの確認を案内しています。管理会社を相談窓口にして、判断する主体、必要書類、審査の時期、工事前の承認・届出を確かめましょう。

3.見積もりは、工事範囲と将来の計画をそろえて比べる

窓枠ごとの交換、ガラスの交換、内窓の設置を区別し、施工会社に図面・仕様・工程を示してもらいます。開閉の手間、取付け後の寸法、既存窓の状態、換気や使い方も相談し、「必ず結露がなくなる」と決めつけないことが大切です。工事の可否と効果・費用は別に確認します。

全体改修の予定や個人工事との調整、工事後の維持管理・不具合時の負担も管理組合等へ確認します。住まいを直す費用と権利の違いは、別の物語「2人の家だと思っていた。事実婚のパートナーと、床の張り替えが止まった理由」でも描いています。

次の一歩|注文する前に、何を替えたいか伝える

窓の場所と困っていること、検討中の工事方法をまとめ、管理規約と照らして相談しましょう。工事日や製品の発注は、必要な承認等の見通しを確認してから進めると、行き違いを減らせます。

※実用情報は2026年10月18日に国土交通省の掲載資料と令和7年改正マンション標準管理規約(単棟型)第7・14・17・22条等を確認。窓の扱い・工事の手続は、各物件の規約と具体的な工事内容により異なります。