夫婦・パートナー

「空いてる部屋でしょ」夫の模型が増えた部屋に、私の机を置くまで

【PR】この記事にはアフィリエイト広告を掲載しています。商品・サービスの案内は記事本文と区別した広告枠に表示しています。

水彩画を持って机の前に立つ54歳の冬実と、模型を自分の棚へ戻す56歳の俊介のイメージ

子どもが独立して、部屋が一つ空いたはずでした。けれど、自分が使いたいと言うと話が変わる。夫の趣味の物と、妻が広げたい道具。同じ家の中で、自分の場所をつくるまでの物語です。

※この記事のSTORY部分は、実際に起こり得る状況をもとに構成したオリジナルフィクションです。

STORY|箱には、先に住所があった

冬実が絵の具を片づけていると、夫の俊介が夕食の皿を持ってきた。

「まだ描くの?」

「乾かしてるの」

「じゃあ、あっちに置けない?」

あっちとは、食器棚の上だった。冬実は紙の四隅をつまみ、描きかけの柿を立ったまま眺めた。そこでは、どの色も少し暗く見えた。

54歳。週3日の事務の仕事を続けながら、この春、公民館の水彩画教室に通い始めた。描くのは楽しい。家でも広げたい。でも食卓は、描き終わる時間を食事に合わせなければならなかった。

27歳の娘が家を出てから、2年になる。娘の荷物はすでに引き取ってもらった。部屋には学習机とベッドが残り、その間を、俊介の模型の箱が埋めていた。

56歳の俊介は飛行機の模型が好きで、転勤が落ち着いたころから、また買うようになった。「そのうち作る」と言う箱は、完成品よりずっと多かった。

冬実は夕食のあと、部屋の入り口に立った。

「この机、私が使いたい。窓の方へ向けて」

俊介は一番上の箱を下ろし、また戻した。

「ここ、空いてる部屋でしょ。ほかに置くところ、ないんだよ」

「私が使いたいと言ってるんだから、もう空いてないよ」

言ってから、少し気持ちよすぎる言い方だったと思った。俊介の顔も硬くなった。

「あとから来て、全部どけろってこと?」

冬実は、言うつもりだった「箱ばっかり」を飲み込んだ。

捨ててほしいのか、使いたいのか

翌日、俊介が折りたたみ机を見つけてきた。居間の隅に置けばいいと言う。

冬実は画面を見ずに、「それなら今と変わらない」と答えた。使わないときは畳める、が、夫の勧める理由だった。畳まずに置いておける場所がほしい、と話したはずなのに。

「あなたの箱は、しまう場所がある。私の絵は、終わるたびにどくでしょう」

俊介は「そんなふうに言われても」と、スマホを伏せた。

週末、2人で部屋の物を見た。俊介は箱を開けず、飛行機の違いを説明し始めた。冬実には、似たような灰色の機体にしか見えなかった。

「これは、翼の形が違って」

「それを理解したら、机を使っていいの?」

俊介の手が止まった。冬実も黙った。

趣味の説明を聞くのが嫌なのではない。ただ、模型を好きにならなければ、自分の希望を言えないような気分になっていた。

「捨ててほしいんじゃない。私も、ここで描きたい」

「俺だって、作りたいんだけどな」

そう言われて見ると、学習机の上にも箱が積んであった。俊介にも、ここで模型を作った形跡はなかった。

冬実は机の上の箱を、勝手には開けなかった。代わりに、自分の画用紙を食卓から持ってきて、箱の横に置いた。

「これを、動かさずに乾かしたい。欲しいのは、これだけの場所」

俊介は紙の大きさを見たあと、ベッドを見た。

部屋を空けても、箱は消えない

娘に連絡し、ベッドを残しておく必要があるか聞いた。「泊まるときは布団でいいよ」と返ってきた。処分の申し込みと運び出しは、2人で分担した。

空いた壁際に、俊介が持っていた低い棚を移した。重い物を下へ入れ、棚が倒れたり物が落ちたりしないよう、固定方法も調べた。机は窓に向けた。

俊介が手放すと決めたのは、同じ機体の箱を2つだけだった。冬実は、もっと減らせると思った。俊介は、残した箱を数え直し、棚の一段ずつに納めた。

入りきらない分を廊下へ出そうとしたとき、冬実は止めた。

「部屋の外を倉庫にするのは、違う」

俊介は小さく息を吐き、寝室の自分の収納を開けに行った。その日は、夕食まであまり話さなかった。

冬実も、部屋を丸ごと自分の物にする希望は引っ込めた。窓際の机は冬実。壁際の棚と小さな作業台は俊介。絵を乾かす天板と模型を置く場所には、互いに物を足さないことにした。

次の休日、冬実が筆を洗って戻ると、机の端に、小さな飛行機が置かれていた。

「光がいいと、色が分かるんだよ」

俊介が、いかにも当然という顔で言った。

冬実は飛行機には触らず、濡れた画用紙を両手で持って立っていた。

「ここ、滑走路にするには短いと思う」

俊介は飛行機を持ち上げた。棚まで運びながら、「だから、もう離陸した」と言った。

この話、実際なら?|夫婦の趣味の物と、共有スペースを分ける

冬実と俊介の問題は、箱の数だけではありませんでした。物を置く場所は決まっていたのに、人が使う場所が決まっていなかったのです。以下は、家族で相談するための編集部の整理案です。

1.趣味の価値より、困っている動作を伝える

「使っていないから不要」「私には全部同じ」にすると、残したい理由の言い合いになりがちです。「食事のたびに作品を移している」「椅子を引けない」など、暮らしの中で起きる動作から話してみましょう。

厚生労働省「こころの耳」のアサーションの説明は、相手を尊重しながら、自分の考えや気持ちも伝える方法を示しています。趣味への賛同と、置き場所への同意は、別に相談してよいことです。

2.「一時置き」を、期限のない専用場所にしない

部屋を片づける前に、誰が、何のために、どの面を使うか決めます。机1台、棚の何段、乾かすための天板など、使える範囲を具体的にする方法があります。

新しい収納を買うなら、その費用と置き場所、組立てや移動の負担も相談します。ほかの家族の物を売ったり捨てたりする前には、本人の意思を確認しましょう。子どもが残した家具も、「もう家を出たから」と一方的に処分しないようにします。

3.安全と、好みの違いは切り分ける

総務省消防庁の案内は、家具の固定だけでなく、倒れたときに出入口を塞がない配置も重視しています。収納を増やす場合も、扉の開閉、通り道、家具の転倒・落下への対策を先に確認します。

そのうえで、好みや物量の違いは残っても構いません。「棚からあふれたら買い足す前に相談する」「2か月後に使い勝手を見直す」など、後で確かめられる約束にする方法があります。話し合いだけで一度に解決するとは限りません。

親の家で「まだ使うの?」がすれ違う場面は、「その食器、まだ使うの?」実家を片づけに来た52歳の娘が、持ち帰ったものでも描いています。夫婦とは違う関係から、持ち主の意向と暮らす場所の両方を考える物語です。

次の一歩|収納を買う前に、使いたい場所を測る

物の一覧だけでなく、自分が何を広げたいのか、その大きさを確かめてみましょう。残す物を決める人、移動する人、費用を出す人も一緒に確認します。「捨てた量」以外に、今日からできるようにしたいことを一つ決めるところから始められます。

※出典は2026年10月19日に確認。空間の分け方や会話例は編集部の提案です。家具の固定は、家具・建物の構造に合う方法を確認してください。